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東京地方裁判所 昭和50年(特わ)285号 判決

国籍

韓国

住居

東京都板橋区大山町五五番地五号

金融業

作田政成こと

鄭一鶴

大正一四年一二月一三日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官神宮寿雄、弁護人小林茂実出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役六月および罰金四五〇万円に処する。

右罰金を完納できないときは金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、東京都文京区本郷二丁目二二番一号(昭和四五年二月からは文京区小石川一丁目一三番二号、昭和四六年二月からは千代田区三崎町三丁目一番一〇号、同四七年二月からは台東区東上野一丁目二四番一一号、同四七年七月からは千代田区神田駿河台三丁目一番)に事務所を置き、親和物産、三洋企業、日興物産等の名称で金融業を経営していたものであるが、自己の所得を免れようと企て、利息収入の全部を除外して簿外預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和四六年分の実際総所得金額が二、〇一二万九、〇一一円あつたのにかかわらず、昭和四七年三月一五日、東京都北区王子三丁目二二番一五号所在の所轄王子税務署において、同税務署長に対し総所得金額が一〇九万五、三〇〇円でこれに対する所得税額が四万三、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年分の正規の所得税額八一三万四、九〇〇円と右申告額との差額八〇九万一、四〇〇円を免れ(修正損益計算書および税額計算書は別紙(一)(三)のとおり)

第二  昭和四七年分の実際総所得金額が二、四五八万〇、七六五円あつたのにかかわらず、昭和四八年三月一四日、東京都板橋区板橋一丁目四四番六号所在の所轄板橋税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が二〇〇万円でこれに対する所得税額が一二万四、四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年分の正規の所得税額一、〇五一万六、〇〇〇円と右申告額との差額一、〇三九万一、六〇〇万円を免れ(修正損益計算書および税額計算書は別紙(二)(三)のとおり)

たものである。

(証拠の標目)

判示全般の事実につき

一、被告人の検察官に対する昭和五〇年一月一三日付および同月一八日付各供述調書

一、被告人の収税官吏に対する昭和四九年七月一六日付質問てん末書

一、吉田秀郎の検察官に対する昭和五〇年一月二八日付および二月三日付各供述調書

一、東京都経済局金融部金融課長作成の貸金業の届出有無について(回答)と題する書面

一、押収してある確定申告書二通(当庁昭和五〇年押第一〇二二号の一、二)

別紙(一)(二)の各〈1〉収入利息につき

一、大蔵事務官山田富士夫作成の収入利息調査書

一、吉田秀郎の収税官吏に対する昭和四九年四月一七日付、五月三〇日付、六月二六日付および同月二七日付各供述調書

一、山内一夫の収税官吏に対する同年四月三〇日付、五月一七日付各供述調書

別紙(一)(二)の各〈2〉再割利益について

一、大蔵事務官山田富士夫作成の再割利益調査書

一、平山伝作成の「作田政成の手形割引について」および「作田政成への持込手形の再割引について」と題する書面各一通

別紙(一)(二)の各〈3〉ないし〈12〉の各費目につき

一、大蔵事務官鈴木毅作成の営業費調査書

一、吉田秀郎の収税官吏に対する同年六月一四日付質問てん末書

別紙(一)の〈13〉、同(二)の〈14〉の各貸倒金につき

一、吉田秀郎の収税官吏に対する同年六月二〇日付および七月二三日付各質問てん末書

一、吉田秀郎の検察官に対する昭和五〇年二月七日付供述調書

別紙(一)の〈16〉、別紙(二)の〈13〉の各特別賞与につき

一、大蔵事務官山田富士夫作成の利益分配金調査書

一、被告人の収税官吏に対する昭和四九年一月一六日付、二月五日付、六月二八日付各質問てん末書

別紙(一)の〈14〉、別紙(二)の〈15〉敷金等償却費につき

一、大蔵事務官鈴木毅作成の支払賃料等調査書

別紙(一)の〈15〉、別紙(二)の〈16〉の各減価償却費につき

一、大蔵事務官鈴木毅作成の減価償却費の計算書と題する書面

(法令の適用)

被告人の判示第一、第二の各所為はいずれも所得税法二三八条に該当するところ、所定刑の懲役刑と罰金刑を併科することとし、判示第一と第二の罪は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、罰金刑については同法四八条二項により所定の罰金額を合算した額の範囲内で、被告人を懲役六月および罰金四五〇万円に処し、右の罰金を完納できないときは、同法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、なお被告人は本件摘発後は深く反省し、修正申告したほ脱税額を完済するべく積極的に努力しており、また現在は極めて病弱であること等の諸般の情状を考慮して刑法二五条一項を適用し、この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 安原浩)

別紙(一)

修正損益計算書

鄭一鶴

自 昭和46年1月1日

至 昭和46年12月31日

別紙(二)

修正損益計算書

鄭一鶴

自 昭和47年1月1日

至 昭和47年12月31日

別紙(三)

税額計算書

鄭一鶴

自 昭和46年1月1日

至 昭和46年12月31日

税額の計算

別紙(三)

税額計算書

鄭一鶴

自 昭和47年1月1日

至 昭和47年12月31日

税額の計算

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